カシスは、スグリの仲間の低木になる、黒紫色の小さな果実です。日本語では「クロフサスグリ(黒房すぐり)」、英語では「ブラックカラント」と呼ばれます。見た目はブルーベリーに似ていますが、植物の仲間がまったく違い、味も「甘酸っぱくて香りが強い」のがカシスです。
この記事では、カシスとはどんな果実か、ブルーベリーとの違い、食品成分表で見る栄養、カシスパウダーの使い方を、公的な資料をもとにまとめます。
カシスとは:スグリの仲間の黒い果実
カシスは、スグリ属(学名 Ribes nigrum)の植物の果実です。農林水産省の作物の分類では「ふさすぐり」の仲間として、赤い実のレッドカラント(アカフサスグリ)と並んで整理されています。文部科学省の「日本食品標準成分表」でも「すぐり類」の中に入っていて、別名として「くろふさすぐり」「くろすぐり」が書かれています。
「カシス」はフランス語での呼び名で、日本ではこの名前がいちばんよく使われています。お店で見かける呼び名をまとめると、次のとおりです。
- カシス:フランス語由来の呼び名。お菓子や飲み物でよく使われる
- ブラックカラント:英語の呼び名
- クロフサスグリ・クロスグリ:日本語の呼び名。食品成分表でも別名として使われている
日本のお店では、生の果実よりも、冷凍の果実や、ジャム・ジュース・パウダーなどに加工されたものを目にすることが多い果物です。
カシスの味と香り:さわやかな酸味と独特の香り
カシスの味は、ひとことでいうと「酸味がしっかりした甘酸っぱさ」です。農林水産省に地理的表示(GI)として登録されている「あおもりカシス」の説明でも、特徴としてさわやかな酸味と独特の芳香が挙げられています。
- 味:酸味が強めで、甘さは控えめ。そのまま食べるより、甘みのあるものと合わせると食べやすい
- 香り:ベリーらしい香りに、少しくせのある独特の香りが重なる
- 色:濃い紫色。少量でも飲み物やヨーグルトがきれいな赤紫色になる
「カシス」と「カシスリキュール」は別もの
「カシス」と聞くと、カクテルの「カシスオレンジ」を思い浮かべる人も多いかもしれません。カクテルに使うのは、カシスの果実を使ってつくるリキュール(お酒)です。果実そのものや、果実を粉にしたカシスパウダーは食品で、リキュールとは別のものです。お酒の味の印象だけで「カシス=甘いお酒の味」と思っていると、果実の酸っぱさに驚くかもしれません。
カシスとブルーベリーの違い
カシスとブルーベリーは、どちらも濃い紫色の小さな果実なので、よく比べられます。ですが、植物としては別の仲間です。ブルーベリーはツツジ科スノキ属(Vaccinium)の植物で、カシスはスグリ属(Ribes)の植物です。
| 比べるところ | カシス | ブルーベリー |
|---|---|---|
| 植物の仲間 | スグリ属(Ribes nigrum) | ツツジ科スノキ属(Vaccinium) |
| 別名 | クロフサスグリ、ブラックカラント | ハイブッシュ・ラビットアイなどの系統がある |
| 味 | 酸味が強く、香りに特徴がある | 甘みと酸味のバランスがよく、くせが少ない |
| よく見かける形 | 冷凍果実、ジャム、ジュース、パウダー | 生の果実、冷凍果実、ジャム、ドライフルーツ |
| 色のもと | アントシアニン(ポリフェノールの一種) | アントシアニン(ポリフェノールの一種) |
どちらも、濃い紫色のもとになっている色素は「アントシアニン」です。あおもりカシスの登録の説明ではアントシアニンが豊富であることが特徴として挙げられており、ブルーベリーの果実がアントシアニンを含むことも、農研機構の研究資料で紹介されています。ただし、アントシアニンの量や種類は品種や育ち方で変わるため、「どちらが多い」と一概にはいえません。
使い分けの目安としては、そのまま食べて甘さを楽しむならブルーベリー、酸味と香りをアクセントにしたいならカシスと考えるとわかりやすいでしょう。
カシスの栄養を食品成分表で見る
文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」には、カシス(冷凍)の項目があります。同じ成分表のブルーベリー(生)と、100gあたりで並べると次のとおりです。
| 成分(可食部100gあたり) | カシス(冷凍) | ブルーベリー(生) |
|---|---|---|
| エネルギー | 62kcal | 48kcal |
| 水分 | 79.4g | 86.4g |
| 食物繊維総量 | 6.4g | 3.3g |
| カリウム | 270mg | 70mg |
| カルシウム | 40mg | 8mg |
| 鉄 | 0.5mg | 0.2mg |
| β-カロテン当量 | 110μg | 55μg |
| ビタミンE(α-トコフェロール) | 2.1mg | 1.7mg |
| ビタミンC | 未測定(成分表では「-」) | 9mg |
この表から、カシスはブルーベリーと比べて、食物繊維やカリウム、カルシウムを多く含むことがわかります。成分表の備考には、カシス(冷凍)100gあたりポリフェノール0.6gと書かれています。
読むときの注意点もあります。
- 状態が違う:カシスは「冷凍」、ブルーベリーは「生」の数値。成分表に、同じ状態どうしの項目がないため
- ビタミンCは比べられない:カシス(冷凍)のビタミンCは成分表では測っていない(「-」)ため、この記事では数値を出していません
- パウダーは別の数値になる:パウダーは水分を除いて粉にしているので、同じ重さでも成分の量は果実と変わる。パウダーの栄養は、商品の栄養成分表示で確かめる
日本のカシス:青森県の「あおもりカシス」
日本では、青森県がカシスの産地として知られています。青森市などの東青地域でつくられる「あおもりカシス」は、2015年(平成27年)12月22日に、農林水産省の地理的表示(GI)保護制度の登録第1号になりました。
登録の説明によると、あおもりカシスは昭和40年に弘前大学の教授を通じてドイツから苗木が導入され、品種改良をせずに当時の品種のまま地域で守り育てられてきました。完熟したものを選んで、すべて手で摘み取って収穫しているとされています。
カシスパウダーの使い方
ふだん使いには冷凍の果実やパウダーが便利です。パウダーは酸味と色が強いので、少量から加えるのがコツです。
| 使い方 | 例 |
|---|---|
| ヨーグルト・シリアル | 上からふりかける。はちみつやメープルシロップを少し足すと酸味がやわらぐ |
| スムージー | バナナやりんごなど甘みのある果物と一緒にミキサーにかける |
| ホットドリンク | お湯や紅茶に溶かし、好みで甘みを足してカシスティーに |
| 牛乳・豆乳 | よく混ぜて、淡いピンク色のドリンクに |
| お菓子づくり | クッキーやパンケーキの生地、ホイップクリームに混ぜて色と香りを足す |
| ドレッシング | オイル・酢・塩に少し加えて、果実の酸味がきいたドレッシングに |
上手に使うコツ
- 甘みと組み合わせる:酸味が強いので、果物・はちみつ・乳製品など、まろやかなものと合わせると食べやすい
- 色の変化を楽しむ:アントシアニンの色は、混ぜるものによって赤みが強くなったり紫っぽくなったりすることがある
- 光・熱・湿気を避けて保存:ブルーベリーのアントシアニンについて、熱や光の影響で分解されやすいという県の研究機関の報告がある。開けたあとは口をしっかり閉じ、直射日光・高温多湿を避ける
- 色移りに気をつける:濃い紫色は、服や白い食器に付くと落ちにくいことがある
手軽にカシスを取り入れたいなら、ヨーグルトや飲み物に混ぜられる有機カシスパウダーも選択肢のひとつです。
Bio Terrace の有機カシスパウダー
Bio Terrace(ビオテラス)では、ニュージーランド産の有機カシスを使った有機カシスパウダーを扱っています。有機JASマークの付いたフリーズドライのパウダーで、ISO22000認証を受けた工場で製造しています。ヨーグルトやスムージー、シリアルのトッピングのほか、お湯に溶かしてカシスティーとしても使えます。少しずつ試せる50gと、よく使う方向けの100gがあります。
まとめ
- カシスは、スグリ属(Ribes nigrum)の黒紫色の果実。クロフサスグリ、ブラックカラントとも呼ばれる
- 味はさわやかな酸味と独特の香りが特徴。カクテルに使うカシスリキュールとは別もの
- ブルーベリーはツツジ科スノキ属で、植物の仲間が違う。どちらも色のもとはアントシアニン
- 食品成分表では、カシス(冷凍)はブルーベリー(生)より食物繊維・カリウム・カルシウムを多く含む
- 日本では青森県の「あおもりカシス」が、地理的表示(GI)の登録第1号
- パウダーは酸味と色が強いので、少量から甘みのあるものと合わせて使う
参考にした資料
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(果実類:カシス 冷凍、ブルーベリー 生)
- 農林水産省「地理的表示 登録第1号:あおもりカシス」
- 農林水産省「作物分類(ベリー類等の小粒果実類)」
- 農林水産省 品種登録「すのき(ブルーベリー)属 審査基準」
- 農研機構 食品総合研究所 研究成果資料(ブルーベリー培養細胞のアントシアニン)
- 愛媛県 研究資料(ブルーベリーアントシアニンの安定化)
